2006年06月03日

言い訳です

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 ええ、一週間ほど前、たしかに「明日か明後日くらいに作品を載せます」って言いました。
 私、嘘をついてしまいました。
 以前書いた物を再録するつもりでいたのですが、どうもラストが気に入らない。で、あれこれいじったり、あちこち遊びに行ってるうちに時間が経ってしまいました。

 でも、いい加減にしとかないと。
 いや、待ってる人がいるとは思えないんですけど、たいしたことも無いネタをいつまでも引っ張っているという、悪趣味状態に陥っているような気もしますので。

 気に入らない部分をどうにもできないのは、現時点の私の力量不足ってことで、そのままアップします。ちなみに主人公は、「サービス・ステーションにて」と同一人物です。たぶん。
posted by 緑川 at 22:35| 福岡 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月28日

くーるだうん

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 一昨日の写真の続きです。

 インコにも表情があります。
 これはなんとなく得意げです。
 もっと機嫌がいいときは笑っているように見えます。
 怒ると目が三角になります。

 ほんとです。

 なんだか文章が、八木重吉の詩のようです。

 赤んぼが わらう

 あかんぼが わらう

 わたしだって わらう

 あかんぼが わらう

 いや、ちょっと(?)違うか。
 では、こうすれば。

 オカメインコが わらう

 おかめいんこが わらう

 わたしだって わらう

 おかめいんこが わらう

 う〜ん……。なんだか壊れっぽい上に、誰かにものすごく怒られそうな気がします。
 では、こうすれば。

 いや、さらに深みに嵌りそうなので、今日はこれくらいにしておきます。
 明日か明後日くらいに、もう一作、販売にまつわる話を載せます。
posted by 緑川 at 21:00| 福岡 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月26日

「サービス・ステーションにて」


 俺はある医薬品メーカーの営業マンだ。だがまあ、そんなことはどうでもいい。
 その日、商品配達を済ませてから、俺はガソリンを入れるため、たまたま見かけたガソリン・スタンドに車を寄せた。そこは、まだオープンして間もないスタンドのようで、設備は真新しかった。客が少ない時間帯のせいか、なんと三人もの従業員が、俺の車の誘導にあたった。
 念の入ったことだ。俺はまだその程度に考えていた。
「オーライ、オーライ、ハイ、ストップ!」
 若々しい顔立ちの、おそらくアルバイトであろう青年が、前方で手をあげた。俺は指示された位置に停車した。彼が駆け寄ってきたので、俺は運転席の窓を開けて言った。
「レギュラーを十リットルだけ入れてくれ」
 しかしその瞬間、彼の顔は引きつったようになった。
「あの、そのう……ハイオクをお試しになりませんか? それに、あの、十リットルだけっていうのは、ちょっと、その、」
「いや、レギュラーを十リットルだ」
 どうせ会社の金なのだが、わざわざハイオクを入れるなど、営業車としては、やはり贅沢だろう。そして、十リットルというのは、俺の会社はあらかじめガソリンを入れるスタンドを指定し、そこのカードを作っているためである。だから本来なら、その会社指定のスタンドを利用しなければならないところなのだが、ガソリンが切れかかっていることではあるし、そんな場合は、この程度なら必要経費として認められるのだ。
 彼は何かを諦めたかのように、小さくかぶりを振って、大声を出した。
「レギュラー、十リットル!」
 三人の従業員のうちの一人は、女性だった。やはり若く、その顔立ちや身のこなしは幼い感じさえした。彼女はその声を聞いて、一瞬、はっとしたようだったが、こちらは悲しげな声で、「レギュラー、十リットル!」と叫んだ。すると事務所の方から、野太い声が飛んできた。
「おい、お前たち、ちょっと来い!」
 二人はいきなり、その男の方へ駆け出した。客である俺をほったらかしにしてである。
 ちなみに三人のうちの最後の一人は、初老の気弱げな男であり、彼はそのとき、俺の車のフロントガラスを拭いていたのだが、気の毒そうな目つきで、駆けていく若い二人を見送った。
 二人は何かのことで、おそらく店主であろうその男から説教されていることが、車の中からでも分かった。若い男の方は、かわいそうに、頭を小突かれてさえいた。やがて、男は二人を引き連れて、俺の方に、のしのしと歩いてきた。そして今度は、うって変わったような猫なで声で、俺に言った。
「あのう、お客様、ここはひとつ、ハイオク満タンってことで、お願いできませんでしょうか?」
 冗談じゃない。俺は断った。
「そうですか。これほどお頼みしても駄目ですか」
 俺は腹に力を入れてうなずいた。男はきつい目つきで、俺をじろりとにらみつけてから、事務所の方へ戻っていった。
 俺は初老の男に聞いた。
「どういうことだ、これは?」
 しかし、彼はうらめしそうに、ちらっと俺に目を向けただけだった。
 女性、というより女の子は、今度は勇気を振り絞るかのように、「レギュラー、十リットル!」と、黄色い声を張り上げた。
 若い男の方が、またもや運転席の横に立った。そして、この店のカード会員にならないかと言い出した。俺はもちろん断った。しかし彼は目を血走らせて、ここのカードを作れば、いかにお得かということを、説明するのだった。
「いや、ほんとにいいんだ。俺は、たまたまここに立ち寄っただけなんだし、滅多にこの辺りまで来ることはないのだから」
 しかし、彼はここで引き下がってなるものかと説明をやめない。事務所の方では、例の店主らしき男が、腕組みをして仁王立ちになり、じっとこちらを見ている。
 と、大慌てで、こちらに駆け寄ってきた。俺は無意識のうちに身構えたが、彼は、給油している女の子の方へ行き、いきなり彼女の頬を張り飛ばした。
「十リットルを超えているじゃないか!」
 男は怒鳴った。どうして分かったのか、どうやら給油の量がいくらか多かったらしい。彼女はべそをかいた。俺は度肝を抜かれた。男はさらに、今度はこちらに近づいてきて、俺の横でまだくどくど言っている、若い男の胸を、どんと突き飛ばした。彼はちからなくよろめいた。
「もういい! このへたくそめ!」
 男は吐き捨てるように言うと、俺の方に向き直り、にこやかな作り笑いをして言った。
「お客様には、今のご説明で、ご納得いただけませんでしたでしょうか?」
 俺は言った。
「いや、大まかなことは分かったけど、俺は最初から、ここでカードを作る気はないんだ」
「ほう……」男はなぜか余裕のある態度を示した。
「だいたいが、俺は滅多にこの辺りには来ないし、第一、これは社有車で、ちゃんと会社指定のカードが別にあるんだ」
「でも今日は、私共のスタンドをご利用いただいたわけでございましょう。やはり、このような機会も、たまにはあるわけでございますから」
「今日は、たまたま、そのカードが使えるスタンドが見あたらなかったから、ここに来ただけなんだ。ガソリンも切れかかっていたし。だから、ここのカードは必要ないんだ」
 だんだん俺も興奮してきた。
「では、どうあっても」
「ああ、」
「では、せめて、そのカードを発行しているスタンドを、お教え願えませんでしょうか」
 俺はあぜんとした。そんなことを聞いてどうするのだ。しかし彼が、その口調とは裏腹の、ものすごい形相で迫ってくるので、その名前だけは教えてやった。
「はあ、はあ」
 彼は、さも納得したかのようにうなずいた。そして、また言った。もう、いいかげんにしてくれ。
「ここに、」と彼は用紙とボールペンを取り出してきた。「お客様のお名前と、ご住所と、お電話番号を、お書き願えませんでしょうか。それと、ここのアンケートの欄に。いえ、ただ今後の参考までに」
 不安そうに若い男と女、それに初老の男が俺たちを見守っている。
 俺は、もううんざりしていたので、「書かないよ」と、こともなげに言い捨てた。
 男は、信じられないといった顔で、俺を見た。そして、いまいましげに舌打ちをしたかと思うと、さらに泣きそうな顔になり、最後に、手に持っていたものを何もかもうっちらかして、頭をかきむしりながら、うめき始めた。俺は最近、こんなに驚いたことはない。
 三人が慌てて男を支えた。
 三人のうち若い方の二人が、発作を起こした店主の体を両側から抱え、事務所の方へと運んでいった。俺はぼうぜんと、その後ろ姿を見送った。初老の男が、ぬっ、とまともに俺の顔をのぞきこんだ。今度はなんだ。いやな予感がした。彼は、まるで一流レストランのウェイターのように、丁重な口調で俺に言った。
「お客様、今日は洗車はよろしかったでしょうか」だが、俺はその先を言わせなかった。
「レギュラー、十リットルでいくらだ」
 しぶしぶといった感じで、彼は金額を言い、俺は金を払った。そして俺の求めに応じ、彼は、自分の宝物をいじめっ子に差し出す子供のように、俺に領収書を差し出した。
 会計を済ますと、彼はまた言い出した。
「洗車のコースをご説明させていただきますと……」
 あえて彼を無視しようとしてそっぽを向くと、先程の若い従業員が、こちらに近づいて来るのが目に入った。あいまいな笑顔を浮かべ、目が泳いでいるが、その手には、オイル交換の料金表らしきものをしっかりと握っている。いつの間にか、あの女の子も戻ってきている。車の脇でしゃがみこんでいるのは、どうやら、タイヤの溝の減り具合をチェックしているものらしい。
 戦いは続く。
posted by 緑川 at 20:58| 福岡 ?J| Comment(2) | TrackBack(0) | おはなし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

飛び込み訪販

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 うちの「かめ」の得意ポーズです。
 手を近づけると、ナチュラルにくいっと頭を下げて、「撫でて」をアピールします。どうしても撫でてやらざるを得ません。

 ところで昨日のことですが、午後8時過ぎ、なんだか遠慮がちに玄関のチャイムが鳴らされました。しかし無視です。
 2度、3度、妙な間を置いてまたチャイムですが、やはり無視です。
 やがて彼(たぶん)は去って行きました。
 飛び込みの営業マンなんです、きっと、間違いなく。
 知り合いなら携帯で連絡を取ってくるだろうし、何か本当に用事のある人なら置手紙をするとか、「○○です」ってドア越しにちゃんと名乗るかするだろう。

 2年位前に、まさかこんな時間にと思いつつも、ついうっかりドアを開けたことがあります。すると、「布団屋さんで〜す」って言いながら、営業のお兄ちゃんが立っていました。営業トークに付き合わされて、あまり愉快な体験ではなかったです。
 何も買わずに、お引取り願いましたけど。
 それ以来、夜の「ピンポ〜ン」は無視です。

 しかし、気持ちは分からないでもないです。
「頑張れよ」なんて気持ちも少しだけあります。もちろん、それが怪しい営業でない限り。
 実は昔、私も似たようなことやってましたから。

 そんな頃に書いた話を今からアップします。
 ジャンルとしてはユーモアです。
 
posted by 緑川 at 20:47| 福岡 ?J| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

以前のHP

 一週間、更新をお休みしてサイト巡りをしておりました。
 ま、ちょっとしたカルチャーショックというか。
 今まであまりにお上りさん気分であったなと。

 冷や汗もかいたり……

 たとえばこちら、『冷麺』さんの2003年4月11日の記事、
 http://kowagari.net/diary/archives/200304/closing.php

 サイト閉鎖にちなんだご発言で、


「別にあんたんとこなんか更新しなくてもいいんですよ。休止とか宣言する必要すらない。過去ログ何回も読みますよ。それだけで楽しいんですよこっちにしたら。あんたがどうでもいいと思ってるログを楽しみに読んでる人間がたくさんいるんですよ。」


 いや、まさか以前の私のHP『緑の切妻』に「楽しみに読んでいる人間がたくさんい」たとは、とても思えないのですが、全ログ削除をやっちゃった私としては、かなり耳が痛い……。

 と思っていたら、さらに。

『趣味のWebデザイン』さんの「閉鎖する前に考えてほしいこと」。
 http://deztec.jp/lecture/cl/close.html
「コンテンツの削除は管理人の特権です。閲覧者には決定権がないし、故あって閉鎖するのは致し方ないことです。もちろん、ふと何の気なしに閉鎖するのも管理人の自由でしょう。ただ、あなたのサイトが消えて、泣く人がいるかもしれないということに、気付いてほしい。安易な閉鎖は、思いとどまってほしいと私は願う。」


 実際、持て余してたんです。以前のHP。
 作り始めの頃の熱意も失せて放り投げ状態だったし、閲覧者も少なかったので、どうせ誰も見てないだろうって感じでばっさりと削除……。

 しかし言われてみると、たしかに私にも、お気に入り登録してたサイトがいきなり消滅していて、残念な思いをしたことがあります。

 以前のHP、完全ではないですがデータは取ってあります。
 個人的なメモリアルボックスのつもりでおりましたが、これから、このブログで、再現できるものは再現しようと思います。
続きを読む
posted by 緑川 at 01:17| 福岡 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月16日

改めて……


 一日置いて補足です。

 この件については、もう、暫くはここに書くことはないだろうと思っていましたが、言い足りてなかったと思うので、もう少し。

 ここ、もともと日記系のブログでして、時事問題について云々するつもりはありませんでした。

 今までもネット上ではそうしてきましたし。

 ただ今回、これはあまりにも身近な問題ですし、ささやかながら私の周囲にも伝えたいと思いまして、取り上げることにしました。
 まあ、5月10日の文章では雑感もしくは素朴な疑問だったのですが、それから調べてみたところ、私があれこれ言うまでもなく、すでに、多くの方がブログに書かれていました。

 そして今度は、それらを紹介したいと思いまして、一昨日の投稿となりました。
 改めて、文中で「創難駄クリキンディーズ2004福岡」さんの記事にリンクを貼らせて頂きます。
 http://osa3.blog.ocn.ne.jp/project/2006/05/post_cabf.html

 一般市民のみならず、地元財界さえも、市のオリンピック招致計画を批判していることが、時系列に沿って分かりやすく書かれています。
 私にとって、大変、参考になる記事でした。

 あと追記として、今後、このブログで時事を扱うときはスタイルが変わると思います。これまでのように、そんな機会はあまり無いと思いますし、いつ何に目を向けるかも分かりませんが。
 5月10日の私の文章のように、個人の感覚ばかりを強調しているようでは駄目ですね。

 本の批評をするときなどは、典拠の引用や参考文献の明示は、今までもちゃんとやれてたと思うのですが……これは、蛇足です。
posted by 緑川 at 22:00| 福岡 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月14日

福岡おりんぴっく再考

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 再考です。決して「最高!」と言ってるわけじゃありません。
 ごめんなさい。
 つい、その……。

 それはさておき、先日の私の文章、ちょっと甘かったなと。

 私は私なりに、オリンピック推進派にはそれなりの人数がいて、なんらかの理由をもって反対派に対峙しているのではないかと、そういうイメージをもってました。
 なぜって、現実にオリンピック招致計画が進んでいるようですから。

 にもかかわらず、私の周囲では「賛成!」という声は聞こえない。
 テレビや新聞などのマスコミでも、福岡市の計画には問題があるといった指摘が多いようで。
 ネットでも、……熱心に探したわけではないのですが、推進派がなんだか見あたらない。

 公平を期したいとも思ったんです。
 まあ私は、すでに反対に傾いてはいたのですが、判断を下す前に、両者の言い分を聞いてみないといけないと。

 で、先日トラックバックを頂いたこともあり、あちこちの、いろんなサイトの文章を読ませて頂いたのですが、見つからないんです。推進派の説得力のある議論。

 繰り返しになりますが、私、甘かったようです。
 もしかしたら、福岡市にオリンピックが来ることで、何か私の知らないメリットが、市と私にもたらされるのかも、なんて。

 なんだか分からないうちに、一部で、本当の理由は公にされないまま計画が進められている。
 うん。これが結論です。

 この件については、もう私がここであれこれ言うより、
 トラックバックの欄の「創難駄クリキンディーズ2004福岡」さんや
 「九州・福岡オリンピック開催招致に反対するブログ」さんhttp://kyusyu-olympics.seesaa.net/article/17712658.html
 を、参照すべきでしょう。

 興味をお持ちの方には参考になりますし、興味をお持ちでない方には、興味を持つきっかけになるかと思います。
posted by 緑川 at 20:54| 福岡 ????| Comment(5) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月13日

「儀式」


 一夜明けると新しい年を迎えることになる。
 そして僕は数えで十五歳となり周囲から「成人」とみなされる。
 なんでも昔は二十歳になってから、ようやく成人の仲間入りが許されたらしい。二十歳を「はたち」と特別な読み方をするのは、その名残だと聞いたことがある。
 しかし、それでは遅いだろう。
 僕が子供の頃から働いているうちの農場では、二年くらい前から、父がやっている仕事のほとんどを僕も受け持っている。村の行事でも何でも大抵の役割はこなす。もっとも、その全てではない。ただ、そのことにしても、出来ないのではなく、まだ立場的に許されていないだけだ。
 それを考えると、昔は何かの事情で子供を大人にさせたがらなかったのではないかという気もする。
 だが、まあそんなことはともかく、この夜が過ぎ去ってしまうと僕はもう大人だ。

 拍手が一斉に響く。
 朝の光が斜めに差し込んでいて、畳の縫い目までくっきりと浮かび上がらせている。座敷に集まった一族の面々が神棚に向かって頭を下げる。空気が動くのが分かる。そして再度、拍手。
 新年を寿ぐ祝詞を、一族を率いる祖父が唱え始める。皆が唱和する。
 小柄なはずの祖父の背中がやたらと大きく見える。
 やがて祝詞は終わり、僕は、あらかじめ言われていた通り、前に足を踏み出す。そして、祖父の隣りに並んで立つ。
 新たな祝詞を祖父が唱え始めた。これは今まで聞いたことがない、いや僕がまだ幼い頃、叔父の成人の儀で聞いてはいるが覚えていない―抑揚と言葉の羅列だ。
 ふと僕の名前が呼ばれた。いや違う。言葉の波の中に僕の名前が埋め込まれ、繰り返し唱えられている。僕が成人となったことが、天地の神々に報告されているのだ。冴え返った空気の中、厳粛な気持ちとはこういう状態をいうのだと、僕は思った。
 僕が主役から降りた後も、新たな年を迎える儀式は、午前中いっぱい続いた。秋に三歳で死んだ僕の姪のことも、また改めて神々に託された。屋敷の各箇所へのお供えも念入りに行われ、そのそれぞれに定められている祝詞が唱えられた。
 荒神様では祖母が導師となり、僕の母を含め女達がその周囲を固める。男達は、台所のすみで遠慮がちに祝詞に唱和する。
 やがて、それらも全て終わった。
 そして今度はうって変わった寛いだ雰囲気の中、全員で和やかに食事を取り、その後、男達(もちろん大人の男という意味だ)は別室に籠って新たな儀式を始めることになった。
 これは正月とは関係なく、毎月の一日と十五日に行われる、子供には見ることさえ許されない儀式だ。
 当然、今日より大人の仲間入りをした僕も加わる。

「なんですか、これ」
 手渡されたそれは、今まで見たことも聞いたこともないものだった。長さも太さも、小指よりいくらか小型の白い紙の筒。よく見ると、中におがくずのようなものが詰まっている。
「それは、煙草というものだ」と父が僕に教える。「気をつけろよ、毒があるから」
 僕はなんとなくその匂いを嗅いでいたのだが、慌てて顔から遠ざけた。皆―大叔父や伯父、叔父、年長の従兄達が笑う。いつも厳しい顔つきをしている祖父も、にやっと笑う。
「大丈夫、大丈夫。そのくらいじゃなんともない」
「だが、口に入れるなよ」
「口に入っても、ふつうはすぐに吐き出すけどな」
 皆が口々に言う。僕は顔をしかめる。いくら儀式とはいえ、なぜこんなものを。実際、匂いもよくない。苦い。
「それはな、こうするんじゃ」
 祖父が、煙草の端っこを口にくわえ、もう端っこを神棚の灯明に近づけた。
 と、薄紫色の煙が立ち昇り、なんともいえない匂いが漂う。
 すぐに皆がその後に続く。あっという間に部屋の空気が濁ったような感じになる。
「お前もやってみろ」
「ほら、なんともないから」
 ためらう僕に、皆が口々に言う。
 それで僕も、その毒物でもあるらしい煙草というものを賞味してみた。そして猛烈にむせ返る。
 また、皆が笑う。「けむいか」と聞かれる。「誰でも最初はこうなるんだ」という声も聞こえる。僕は意地になって、さらにその苦い煙を肺一杯に吸い込む。
「おいおい、無理はするなよ。まだ、これもあるから」
 げほげほやっている僕の目の前に徳利が突き出される。
「酒」と書かれた文字が涙でにじんでいる。
「旨いぞ、これも。といっても、まだお前にはこの旨さは分からんだろうがな」
 また、ばかにされたような気分になる。
「水みたいなもんじゃないですか。色もついてないし」
「呑んでみりゃ分かる。ほれ、……あっ、無理するな」
 僕は、生まれて初めて目にする「さけ」というものを、なぜか、負けてたまるかという気持ちで、ごくごくと喉に流し込んだ。
 そして、またむせる。
 そんな調子で、僕は大人の正式な仲間入りをした。
 朝の儀式よりも、こちらの方が「正式」な気がしたのは不思議だった。

 次の日の昼過ぎまで僕は寝込んだ。
 とはいっても、正月の間はたいした仕事はない。何より大人達は皆、僕がこうなることを見越していたかのように、とがめだてひとつしない。
 しかし、なぜあんなものを呑んで吸って、皆、陽気に騒ぐことが出来るのだろう。それに、儀式と聞いていたが、あれはたんに騒々しい集会のようなものだ。
 しかし、皆、楽しそうではあった。
 そして夜、酒も煙草もこれでおしまいって時になると、皆、名残惜しそうに……まるで、子供が玩具を取り上げられるような顔つきをした。誰かが言った。「また、二週間の辛抱だ」この言葉に、ほぼ全員がうなずいたと思う。
 足音がする。
 ふすまが開かれ、父がなぜか上機嫌で僕の枕元にあぐらをかいた。
「どうだった、昨日は」
 僕は顔をしかめてみせる。父が声を出して笑う。
「ま、あんなもんだ。最初は。そのうちお前も、月に二回のあれが、待ち遠しくてたまらなくなる」
 とてもそうは思えない。
 顔を赤くして―「酔っている」という状態らしい―、いがらっぽい煙の中で騒ぎあう。僕の朦朧とした頭の中で、人の声ばかりが、がんがんと響く。ほとんど悪夢ではないかとさえ、昨夜は思った。
「これで、お前も大人だなあ」
 父が感慨深げに僕の顔を覗き込む。
 これはちょっと……、僕は顔をそらせて、水を飲みたいと父に告げた。

 次の儀式、一月十五日が来るのが憂鬱だった。
 しかし皆の手前、そんな様子は微塵も見せず、僕は煙草と酒に挑んだ。そして沈没した。二月の二回の儀式もそうだった。こんなもので喜ぶ大人は不可解だ。しかし皆、心底嬉しそうなのだ。
 おかしい。もしかすると僕には何らかの欠陥があって、年齢こそ重ねても、ちゃんと大人にはなり切れていないのではないか、そんな不安が僕を脅かした。
 しかし、ある日「異変」が起きた。
 その三月のある日、なんということもなく、ほころびかけた桜の蕾を見ていたとき、無性に煙草が欲しくなった。あれ、と僕は思った。あんな苦くて不味い物を。これは何かの間違いだとさえ思った。実際、煙草への欲求はすぐに消えた。
 しかし、その日以来、僕の体はしばしば煙草を欲しがった。
「酒」についても同様だった。何か面白くないことがあったときなど、こんなとき酒が呑めればと、僕は素直にそう思った。
 やがて季節は移り、僕は他の大人達と一緒に、月にわずかに二度、酒と煙草を楽しむようになった。
 今現在、酒に酔いしれ、煙草の煙にむせながら、僕は思う。
 たしかにこれらは旨い。だが、体だけでなく頭にも変調をきたす。毒だというのも、まんざら大袈裟な物言いではない。しかし放っておけば、誰もが、のべつまくなしに煙草を吸い酒を呑むようになるかもしれない。
 月に二回だけ、きまった場所に全員集まって楽しむというのは、いつどこで誰が決めたのかは分からないが、賢明な措置だと思う。子供にはその存在さえも教えないというのも、もっともなことだ。
 もしかすると、昔、誰でもが、いつでも好きなように酒を呑み、煙草を吸っていた時代もあったかもしれない。いや、まさか。断じてそれは正気の沙汰ではない。
posted by 緑川 at 22:53| 福岡 ????| Comment(4) | TrackBack(0) | おはなし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

なんか、梅雨っぽい

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 このところ、日本全国ブログ巡り状態です。
 感想はといえば、量も、質の幅もめちゃくちゃすごい! です。

 それで思うのですが、私ごときが今さら何を書こうと、そんなものとっくにどこかで誰かが書いていそうです。ということは、こんなブログをやってても、あまり意味がないものと思われます。したがって、ここに書き込むのもこれで最後にします。

 嘘です。
 ごめんなさい。

 こんなに面白いこと、やめられるもんですか。
 なるべく一日一回の更新ってのも、じつは自分なりに抑制しているんです。ってのは本当です。

 さて、今日のタイトルですが、これに因んだエピソードもいろんなブログで書かれているんだろうなあと思います。もちろん、それはそれでいいのですが、ここでは天候のことは、タイトルと写真に留めたいと思います。

 昨日も、じつは「祝! 一週間」ってやろうとして止めました。
 これも、あちこちで先にやられちゃってましたから。

 しかし、オリジナリティって難しい。
 ほんとうにオリジナルなことなんて、世の中にはそんなに存在しないのではないか。
 いや、こんなことを考えていると、私程度の頭と文章力では収拾がつかなくなりますので、そろそろ終わりにします。

 あ、その前にもうちょっと。

 因みに私の書くおはなしも、なんやかやで、先行作品の影響を受けてますね。後で読み返してみて、ああ、これはあれだ、などと思うことが多いです。
 で、あれを読んでいて良かったなと。
posted by 緑川 at 21:42| 福岡 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月12日

山登り

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 近所の、立花山の楠です。

 子供の頃から山歩きは好きでした。
 それで今回、久々にちょっと登ってみたのですが、山頂までは行ってません。思いつきで登り始めたので、この写真の時点でもう夕方でしたし、空模様も少し怪しかったので。

 いや、たしかにそれもあるけど……、うん。やっぱり正直に言おう。

 体力的にきつかった。
 息が切れてしまって、こりゃしんどい、ってのもありました。

 立花山を知ってる人がこれを読めば、きっと呆れることでしょう。
 私自身、呆れてます。
 何かの間違いじゃないかってくらい。

 きっとこれは、運動不足と煙草と、最近続いた呑み事のせいだ。

 で、運動しようとか煙草を控えようとか(酒はべつに呑まないなら、呑まないでいい)、体のケアについてここで云々するのではなくて、それにまつわる話を書こうとするのが、私らしいといえば私らしい……かも。

 じつはもう概ね書き上げてまして、今日か明日にでも載せます@予告。

 あ、それと山には近い将来、再挑戦します。
posted by 緑川 at 21:12| 福岡 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする